透析で起こり得る症状
1. 透析による副作用
・不均衡症候群
・血圧降下
・穿刺部血管痛                      
・不整脈
・高カリウム血症
・出血の助長
・その他
2. 長期透析で起こり得る症状 ・貧血
・低血圧
・高血圧
・肺水腫
・心不全
・かゆみ
・動脈硬化
・骨への影響
・透析アミロイドーシス
・感染症

「人工腎臓」と聞いたとき、皆様はどのようなイメージを抱かれたでしょうか?
形も大きさも腎臓と同じくらいで、人の腎臓とそっくり同じ働きをするもの・・・。
こんな人工腎臓をイメージされた方はありませんか?
残念ながら、今の人工腎臓は体内に埋め込まれたものではありませんし、健康な腎臓のはたらきを
全て肩代わりできる能力もありません。
しかし、十分とは言えないまでも、週3回の透析で健康な腎臓の15%相当のはたらきをし、
透析者の生命を守るパートナーとして、その役割を果たしています。反面、多くの問題も抱えています。
その一つが、ここで紹介する「透析の副作用と長期透析の合併症」です。

1.透析による副作用
副作用の現れ方は、人によって異なりますが、ゆっくりとした透析で徐々に
体を馴らしていくことで、その症状を軽くすることができます。
原因と症状をよく理解して副作用の予防に努めましょう。

 
・不均衡症候群

透析導入期によく見られる副作用です。
透析を行うと、血液の老廃物は急速にとれてきれいになり、
老廃物がとれにくい脳との間に濃度差が生じます。
つまり、濃度の高い脳は周囲から水分を吸い取り、
むくんだ状態にあります。
不均衡症候群は、脳がむくみ、脳圧が高くなるために
起こります。
症状は、頭痛、吐き気、嘔吐などですが、ひどい場合
は意識障害や痙攣が起こります。
不均衡症候群は透析に慣れれば起こらなくなりますが、
まれに症状が継続する場合もあり、透析困難症と呼ばれて
います。
これらの予防には水分、塩分の制限を守る大切です。

 
・血圧降下
除水が急激であったり、大量に除水された場合は血圧が低下
します。症状は、あくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動悸、冷汗
などですが、ひどくなると胸痛、腹痛、意識障害などが
起こります。急激に血圧が下がることを「ショック」と言い
ますが、ショック症状が起きた場合には何らかの処置が必要です。
予防には、体重を増やしすぎないことが大切です。


・穿刺部血管痛
穿刺針による血管壁の刺激、血管の狭窄、血管内異物の
刺激、血管炎、血管の収縮などで血管痛が起こります。
血管炎以外は温シップとマッサージで処置をしますが、
部位によって血管痛があれば、穿刺部位を変えてもらう
ことも大切です。


・不整脈
心室肥大や動脈硬化のある人では、透析中に不整脈が起こる
こともあります。症状は脈が乱れ、胸がドキドキするなど
です。また、血液中のカリウム濃度が高すぎたり低すぎたり
すると不整脈が出やすくなります。
予防には、血圧のコントロール、カロリー制限
(高脂血症や肥満の予防)、カリウムの多い食品の制限、
ストレスをためないことが大切です。


・高カリウム血症
高カリウム血症(カリウム中毒)は、副作用というより
恐ろしい合併症といった方が適切ですが、カリウムの含有が
高い食物を過剰に摂取すると発生しまう。
不整脈から心臓が停止して突然死の原因となることも
あります。


・出血の助長
血液凝固を抑える薬剤であるヘパリンの使用により出血
(痔、生理出血、鼻血、抜歯後など)しやすくなること
にも注意しましょう。
出血の危険の少ない血液凝固阻止剤もあります。


・その他
透析中に急に体を動かすと足の筋肉などがこわばったり、
突っ張ったり、痛みとして感じられたりすることがあります
ので注意しましょう。

2. 長期透析で起こり得る症状
長期に透析をおこなっている間には、ある種の有害な物質が慢性的に影響し、
合併症として現れることがあります。
合併症を予防するための基本は、十分な透析と自己管理の徹底です。
また、合併症の多くは早期に発見することで対処できます。


・貧血
造血ホルモンであるエリスロポエチンの分泌低下に加え、
尿毒素や栄養不足によって赤血球が減少して貧血が助長
されます。症状は、食欲不振、疲れやすい、動悸、息切れ、
めまいなどです。貧血はエリスロポエチンが人工的に作られ
るようになって、ほぼ改善されるようになりましたが、
予防にためには、十分な透析、十分な栄養、適切な運動が
欠かせません。
 貧血が起こるしくみ


・低血圧
透析年数が長くなると、透析導入期に高血圧だった方も
しだいに低血圧に移行し、透析や日常生活に支障をきたす
方も増えてきます。原因はまだよくわかっていませんが、
自律神経の機能異常、血管運動神経の障害などが疑われて
います。症状としては、起立時のめまい、倦怠感などです
が、無症状のこともあります。
体重管理を徹底し、バランスのよい食事を心がけましょう。


・高血圧
透析導入期には、ほとんどの人に高血圧があります。
このうち約1割くらいの人にはなかなかコントロール
しにくい重症な高血圧をもっています。
高血圧は水分や塩分の取りすぎによって血液量が増加する
ことが原因の一つです。
水分や塩分の摂取量に注意しましょう。透析間の体重増加
は、体重の5%(50kgの人なら2.5L)以内に抑えること
が理想です。


・肺水腫
定期的に透析を受けていても、透析に入る前は体内水分や
塩分が過剰となり、肺水腫を起こしやすい状態になって
います。症状は、むくみ、咳・たん、呼吸困難などです。
ひどくなると血の混ざった泡を口から吹き出し、処置が遅れ
ると死亡することもあります。
予防するには、水分、塩分、体重のコントロールが大切です。


・心不全

心臓のポンプ機能が低下して体に必要な血液を送り出せない
状態を心不全といいます。症状は、むくみ、動悸、息切れ
などです。前述した肺水腫も急性の心不全ではありますが、
心筋梗塞、心筋症など心臓そのものに病気がある場合です。
また、高血圧や強い貧血、シャントの血流が多すぎるときも
心臓に負担をかけることになります。
予防には、水分・塩分の制限、体重・血圧のコントロール
必要な人もあります。
  

・かゆみ
透析中、透析後、就寝時などに痒みが増強されます。
原因は尿毒素やカルシウムが皮膚に沈着すること、
汗が出にくいこと、薬物の副作用やアレルギーなどと
されています。皮膚が乾燥していると痒みが強くなるので、
クリームを塗ることも有用ですが、かゆみ止めや精神安定剤
の内服も有効なことがあります。


・動脈硬化
動脈の内側に脂肪やカルシウムがたまると、血管が狭くなり
血液が通りにくくなります。この状態を動脈硬化といいます
が、透析を行っている人では、高血圧、高脂血症、カルシウ
ム代謝異常などが重なり、動脈硬化を起こしやすくなります。
血圧をコントロールするためには水分、塩分の制限を、
高脂血症・肥満予防のためにはカロリー制限を守りましょう。
また、適切な運動、禁煙、ストレスの解消なども大切です。


・骨への影響
長期透析に生じるもっとも頻度の高い症状は、骨がもろく
なったり、骨折しやすくなったり、骨・関節痛が出てくる
ことです。腎不全ではカルシウム代謝に関する活性型
ビタミンDが不足するので、骨への影響は避けられません。
これら腎不全に伴う骨疾患は腎性骨異栄養症と呼ばれて
いますが、活性型ビタミンDの内服、十分な透析、カルシウム
を多く含む食品の摂取、適度な運動を行って、治療と予防に
努めましょう。
また、高リン血症は低カルシウム血症の主要な原因の一つ
となっていますので、リンを多く含む食事の制限や
リン吸着剤による高リン血症の予防が大切です。

 骨障害が起こるしくみ


・透析
アミロイドーシス
@ 手根管症候群

透析10年以上になると、手の親指、人差し指、中指などが
しびれたり、バネ指といって指が滑らかに伸びなくなる方が
みられます。手根管症候群と呼ばれていますが、これらの
症状は、β2―ミクログロブリンからできるアミロイド
という物質が手根部の腱や骨、関節などに沈着し、
神経などを圧迫するために起きています。
痛みやしびれは手術によって改善しますが、手首や指の屈伸
運動をして関節の動きを保つよう努めましょう。

 手根管症候群の主な症状

A骨・関節症

アミロイドが骨や関節の周囲に沈着すると、骨痛、関節痛、
関節の腫れなどを症状とする骨・関節症が起こります。
骨・関節症には手首、肩関節、大腿骨などの関節の骨に
嚢胞ができて症状を引き起こす骨嚢胞関節症と、四肢の
関節だけでなく、肩や背中の痛み、手のしびれなど
脊椎症状を伴う破壊性脊椎関節症があります。
予防には、β2−ミクログロブリンを体内にためないこと
につきます。このアミロイドは、心臓や消化器など全身に
沈着することもわかり、現在、β2−ミクログロブリンを
除去する透析方法の開発が進んでいます。


・感染症
透析をしている人は、一般に感染に対する抵抗力が低下して
いますので、感染症にかかる率が高くなります。
感染症としては、穿刺部から細菌が侵入して起こる
シャント感染、尿量が少ないために細菌を出せずに起こる
尿路感染、風邪をこじらせて起こる肺炎、結核菌の感染、
輸血後肝炎などがあります。
感染予防には、からだや衣類の清潔、シャント肢の消毒、
十分な透析、うがい・手洗いの励行、十分な栄養、
そして体力をつけることが大切です。


※ 副作用や合併症は、日常注意して生活することで予防することもできます。
もしここに示したような症状が現れた場合には、早めに医師に相談しましょう。
早期に対処することが症状を重たくしないポイントです。